2022年10月23日(日)13:00-16:00@zoomにて、今年度のまちむら寄り添いファシリテーター養成講座第5期の公開講座を開催しました。
今回のテーマは「信州ススム対話『聴こう!話そう!地域のイマ!』」
普段の仕事や暮らしの中で、それぞれの人がどんなことを感じているのか共有し、実際に対話の問いを作って話してみるという対話づくりのプロセスを体験する会となりました。
《開催概要》
開催日:2022年10月23日(日)13:00-16:00
参加者:申し込み:50名(当日参加30名)
講師・アドバイザー:3名
新雄太(東京大学大学院工学系研究科特任助教)
船木成記(一般社団法人つながりのデザイン,元長野県参与)
広石拓司((株)エンパブリック)
事務局:長野県地域振興課、(株)エンパブリック
講師によるパネルトーク「地域での対話の意味とプロセス」
広石 拓司((株)エンパブリック)
地域の中では、教育・災害・福祉など、わざわざ気にしていないかもしれないけど多くの人が「これどうなってるんだろう?」と気になっているテーマはたくさんある。
その中で、一見みんなバラバラに見えたとしても、誰かが「これやってみない?」と問いかけ、対話し始めることで、それぞれの経験や思い、できることが出てくる。
そのできることと求めることが繋がって、そのつながりをきっかけに人もつながっていくような場が広がってほしい。
ただ、対話をしようとしても、意見をぶつけ合って答えを出す議論になってしまったり、「とりあえず飲み会で」のようにその場の雰囲気に任せる雑談にしてしまったりもする。
そういった時に、テーマに対して、ルールのもとにお互いの考えを聴きあうことで相互理解を深めて、関係を作る場が地域に必要になってくる。
なかなか理想的に進むわけではないかもしれないけれど、お互いが話を聴きあい、受け止めあう機会が増えていく中で地域も作られていくのではないか。
新雄太(東京大学大学院工学系研究科特任教授)さん
まちづくりやコミュニティ、自治においてもなんのためにやっているのか、いつのまにか形骸化してしまっていることもある。
奈良井宿で行っている「奈良井ラボ」という対話の場では、400年続いている祭りがコロナでストップしたことを受けて、どうしてお祭りをやってるんだろうということの気づきなおしを行った。
お祭りでおもてなし役を担っていた女性たちからは、「楽だし、もうやらなくてもいいんじゃない?」という声が出てきたり、男性たちからは「お祭りをやらないと始まらない!」という声が出てきたり、立場によって感じていることが違うこともあった。
さらに、対話をしているうちに、お祭りの歴史を編纂している人を突き止めてお話をお聞きしたり、その中で70代くらいの方でも初めて聴いた話が出てきたりすることもある。
それまで続いてきた伝統行事はどうしてやっているのか、聞きにくかったけれど、そういうものだと雰囲気で乗ってた人たちが再度意味を見直すきっかけになる。
船木成記(一般社団法人つながりのデザイン、元長野県参与)さん
日本全国(特に、中山間地域)では、人が減っていく中でどうやって地域を維持しようかと皆さん悩まれて、考えたりもしていると思うが、行政がやってくれたらいいという議論にもなりがち。
そんな時に、誰かがを決めたことを中心に「どう人を動かすか」ではなく、それぞれの一人ひとりの気持ちにあることを持ち寄って、並べて、話してみて「そういう風に思ってるんだ」というところから考えていく、進んでいくことが大切。
ファシリテーターも同様に、地域を俯瞰的にみて”わかっている”存在が「こうすべき」「こうしてみよう」と言うのではなく、地域でさまざまな人の思いや考えが湧き上がっていく風景とそのプロセスがある。
そういう瞬間に立ち会えて寄り添えたり、自分も気づかなかったことを知れることが嬉しいと感じられる、そういう佇まいのファシリテーターが地域社会の中に溢れると、経済的な意味というだけではない、生きることや暮らしにおいて「豊かな地域」が生まれてくると感じている。
その可能性が長野県にまだまだ残っているし、これからまだまだ広げていける部分でもあると思う。まちづくりやコミュニティ、自治においてもなんのためにやっているのか、いつのまにか形骸化してしまっていることもある。
Q. まちづくりの最初のステップとして、地元の人の話を聴く機会が大切になってくるが、その時地域の人の声を「聴く」意味とそのポイントとは?
そもそも、対話の場はあまり肩肘張らなくても「ちょっと話してみようよ」とつくれてしまうものだけれど、場合によっては、抽象論だったり、イメージのぶつけ合いになって実態とは離れてしまうことがある。そのために、今のリアルを知ることが大切になってくる。
自分たちが地域の今を理解するためには、インタビューや聞き書き、アンケートなどいろいろな方法があるが、特に「聞き書き」では聞きたいことではなく、相手が話したいことを話してもらうことができると良い。
そんな声をもとに、また対話をすると、今の時点に立った状態で話すことができるようになる。
Q. 地域の中で話し合いや会合など、既に行われているところもあると思うが、これからこんな「対話」が必要になってくるのではないかと思うとことは?
対話では、「する前とした後で自分が変わっても良い」というスタンスで望めるかどうかが大切。
黒と白で思いが違ったとしても、相手の思いや経験を知れたことで「あの人が白という理由がわかった」というところが対話のスタートになる。
黒か白かの議論になりがちだが、実は同じものを目指していたり、それまでの経験の違いで表向き違っているように見えているだけというところが共有できると良い。
だからこそ、対話の中身も「なぜそう思うのか?」と聴いたり、想像したりするところが、まちむら寄り添いファシリテーターでも伝えてきた「寄り添う」というところにつながっているのではないかと思う。
ワーク「聴こう!話そう!地域のイマ!」
今回の公開講座のメインテーマである「聴こう!話そう!地域のイマ!」では、公開講座にご参加いただいた長野県各地の皆さんがグループとなり、それぞれの思いを共有するところから対話のお題を作り、実際に対話してみるという、擬似的な地域での対話づくりワークを行いました。
ファシリテーターがテーマを決めて与えるのではなく、人々が思いを分かち合うところから共通項を見出して「私たちのテーマ」が浮かび上がってくるプロセスを3つのステップに分けて体験しました。
対話ステップ① 「地域の現場で感じることをシェアしよう!」
最初のステップでは、ランダムなブレイクアウトルームに分かれて、自己紹介を兼ねて、「地域で変わったなと思うこと」「地域の良いところ、もっと良くできたらと思うこと」の2つの問いでそれぞれが地域の現場で感じていることを共有しました。
さらに、各チームでファシリテーター役を決めましたが、ファシリテーターだけが対話の責任を負うのではなく、チームで支え合いながら、一緒に対話の場を作っていくというポイントの確認も行いました。
対話ステップ②「話を深めたいテーマは?」
ステップ②では、先ほど共有した問題意識や地域に対する思いを受けて、話してみたいテーマをグループごとに決めました。
立場、年齢、地域もバラバラな方が集まったチームでしたが、共通の問題意識が見つかったり、自分の地域の状況をふりかえる声も上がりました。
各グループからは、下記のようなテーマが集まりました。
グループ1:「聴く」ための場所づくりをどうしたらいいだろう?
グループ2:新しい人も関わって住みたいまちを作るには?
グループ3:子供たちのための活動をどう作るor再構築するのか?(いいだしっぺが損をする、地域の目の問題を超えて)
グループ4:新住民、旧住民がどう融合していくといいだろう?
対話ステップ③地域のイマとこれからを対話する
最後のステップでは、②で決めた問いを各グループで改めて話し合いました。
最初のワークから、1時間以上ワークの時間がありましたが、まだまだ時間が足りないという様子のチームも見られました!
ご参加者の皆様からは、以下のようなふりかえりの声が上がりました。
◯ 対話をしたことで、参加者同士の新しいつながりができ、今後連絡しあえそうな関係性ができた。
◯ 「新しい人」というテーマで話したが、人や地域の状況によって定義が全然違うということがわかった。
◯ 対話の効果として「共感・新しい視点」が生まれると思った。この短い時間でも感じることができた。
◯ つい自分たちだけの思いで進めていこうとしてしまうが、自分の視野が狭いなと感じた。もっと違う人の声を聞かなきゃいけないと思った。
◯ 話をしていく中で、「コミュニティ」ってなんなのか?という話になった。地域にいる側の視点で見ると「コミュニティ」と思ってしまうが、新しく移住する人にとってその点は意識してほしいのか、その必要はあるのか、と考える話になっていった。
参加者の声(アンケートより抜粋)
◯ 色々な人と話をすることが楽しいと思いました。
◯ やはり、どこも同じような悩みや課題があるんですね!? 多様性の時代では、どれも解決が難しいことです。
◯ 対話を進めるには、まずは顔の見える関係づくりをすることが重要で、
そのあとに個々や地域に思いに沿ったテーマを設定していく必要があるということに気が付きました。
◯ 他地域の方との意見交換や事例などを聞くと、とても興味深く参考になります。
行政の関わり合い方などもいろいろな立場の方がいて大変面白かったです。
◯ 私も聞くだけだど思っていたので、驚きました。 もっと話したいことがありましたが、時間が…
ありがとうございました。
地域に暮らす一人ひとりの思いからはじまる対話をつくろう!
公開講座では、講師の講義ではなく、実践的に対話を進めていくためのプロセスを体験してみました。
今年度は、地域の中で思いを聞き、テーマを決め、話し合っていく対話を「信州ススム対話」と名付け、この対話を一緒に地域で広げていく方々を募集しております!
非日常な対話の場に限らず、仕事や活動、家庭などの暮らしの中で、人々が思いを分かち合い、話し合う対話を一緒に広げてみませんか?
今年度のまちむら寄り添いファシリテーター養成講座では、皆さんが自分の地域で対話を始めるためのステップに応じた講座を複数ご用意しております!
連続講座として受講を希望される方は、下記ページをご覧ください!
詳細はこちら!
https://nagano-machimura.net/kouza2022