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【開催レポート】テーマ別勉強会②「ゼロカーボンに向けて地域にできること」を開催しました!

2023年10月10日(火曜)20:00-21:00@zoomにて、これからの地域づくりテーマ勉強会を開催しました。

今回のテーマは「ゼロカーボンに向けて地域にできること」です。
実際の地域活動や具体的なデータをもとに、環境とのつながりや、ゼロカーボンアクションの効果を知る会となりました。

《開催概要》
開催日:2023年10月10日(火)20:00-21:00
参加者:6名
活動紹介:1名
・「市民が参加する自然エネルギーから始まる地域コミュニティ」
 藤川まゆみさん NPO法人上田市民エネルギー理事長
事務局:長野県地域振興課、(株)エンパブリック

1. はじめに

会のはじめには、勉強会のファシリテーターを務める広石から今回の勉強会の開催趣旨を説明しました。

「まちむら”対話と共創”チャレンジ2023」では長野県の事業として、”まちむら養成ファシリテーター”の活動を広げる取り組みを行っています。今回はこれからの地域づくりテーマを学ぶシリーズの2回目となります。
長野県の総合計画にもある「しあわせ信州創造プラン3.0」において、ゼロカーボンは加速化プロジェクトとして挙げられています。

脱酸素というのは遠いものと思われがちですが、実は地域コミュニティと深い関わりがあるということもありますので、皆さんで考えていければと思います。

2. 長野県の課題・現状について

続いて、長野県環境政策課の担当の馬島氏より、「ゼロカーボンの加速化」に向けた、長野県の現状と課題について説明がありました。

■ 長野県の現状

・5ヵ年計画にある”新時代創造プロジェクト”として県が特に力を入れている重点課題8つがあり、そのうちの1つに「ゼロカーボンの加速化」があります。
・プロジェクトの方向性としては、ゼロカーボン社会共創プラットフォーム(くらしふと信州)においてあらゆる主体との新たな競争を実現し、県民・事業者・地域とともに、制度や事業モデルの創出といったあらゆる手段を駆使して、ゼロカーボンの取り組みを加速化する、としています。
・令和5年以降の主な取り組みとしては、県民・事業者のゼロカーボンの加速、屋根ソーラー普及の加速化、太陽光事業の普及などがあります。
・加速化を進めるために、県民の皆さんに取り組んでほしいことについては、住宅の省エネ性能を高めていく、屋根ソーラーの活用などがあります。県としては、これらを一緒にやっていけるような制度の構築を進めていきたい。

<長野県が気候変動に向き合う理由>
・長野県(長野市、松本市、飯田市)の年平均気温の経年変化を見ると、全国を上回るような速度で気温上昇している。令和元年台風19号災害では200年一度の豪雨となった。これは、地球温暖化の影響で台風の勢力が衰えないまま長野県に上陸したのが原因と考えられている。
・長野県としては、台風災害の12月に気候非常事態宣言を出した。2050年までに二酸化炭素を排出量を実質0にすると決意したものである。全77市町村に賛同された。R2には、長野県脱酸素社会づくり条例も可決。
・こういったことを背景にR3に策定したのが、長野県ゼロカーボン戦略である。

<ゼロカーボンの実現に向けて〜「学び・行動」を促す〜>
・今回は、長野県の取り組みの中の一つである「学び・行動」について説明。
・2030年には、日頃から環境のためになることを実践している人が100%になることを目指している。学びの場、講座等の普及拡大のため「信州環境カレッジ」というHPを運営。全県的な学びの場として、長野県内で開催されている講座を公表している。
・信州ゼロカーボンWEB講座というオンライン講座、信州ゼロカーボンBOOKという県民むけ、事業者むけのガイド本も作成して学習会で配布したり、電子データのダウンロードも可能であったりと、普及につなげている。
・くらしふと信州は、昨年度から募集開始し、長野市に拠点を開発した。ゼロカーボンに取り組んでいる人たちが、集ってプロジェクト創出や学びができるような拠点を作っている。
・ゼロカーボン社会のその先に見据えているのは、快適で利便性の高い社会である。
皆さんが我慢をするだけではなく、地域のためになる、普段の暮らしのためになる、といった観点で、様々な取り組みをする中に、ゼロカーボンを頭の中に置いていただいて、世の中便利になるようなものも活用しながら、無理なく、みなさんと一緒にゼロカーボンを進めていきたいと考えています。


3. 活動紹介

続いて、地域で活動の実践をおこなっている方から、活動の紹介を活動する上で感じていることをご紹介いただきました。

市民が参加する自然エネルギーから始まる地域コミュニティ」
藤川まゆみさん NPO法人上田市民エネルギー理事長

■ 自己紹介:
・広島市生まれ、2005年から長野県に。上田市在住。前職はかっぱ寿司の店員。
・最初は3.11から始まった活動だけど、今はゼロカーボンに向けて活動している。
・ゼロカーボン活動3つの柱を行なっている。
 ①市民出資型太陽光発電「相乗りくん」②教室断熱ワークショップ、③持続可能なまちづくり「上田リバース会議」

■活動のきっかけ:
・3.11の福島第一原発事故時に、大きな問題は誰かが解決してくれると思っていた。
意見や勉強だけじゃ自然エネルギーは増えないことに気づいた。市民もエネルギーの担い手になろうと決意して始めた事業が「相乗りくん」


■ 気候変動の現状
・2018年から温暖化、豪雨が全国各地になり、日本の水害被害額も増加、復興するためにも大変な予算が使われている。
・世界的にも豪雨の被害が散見されている。
・今年の4月国連では、氷河を救う試みは「すでに敗北した」と正式に発表した。
・南極の海氷面積は過去最小。今夏はスーパーエルニーニョが発生か。
・今年、地球の平均海面温度は異常に上昇している。
・異常なことが起きているのが肌感でもわかるようになった。2023月8月は冬のはずの南半球の気温が30〜40度。
・信濃毎日新聞でも、熱中症、農作物への影響についてのニュースもたくさん出ている。
・米をはじめ、リンゴや葡萄などの高価格な果物も影響を受けている。
・国境なき医師団制作:誰もが影響を受ける気候変動アフリカなどでは紛争の原因になっている。い。
・国連のIPCC気候変動に関する政府間パネルの報告書でも、どんどん上がっていく予定。気温上昇の止められなくなる負の連鎖=ティッピングポイントは1.5度から起こると言われている。今は1.1度上昇まできている。2030年までに少なくとも50%に削減させないと1.5度を超える。

■活動内容の紹介

〈相乗りくん〉
・2011年11月に事業がスタート。誰でも参加できる市民出資型太陽光発電・顔の見えるつながりで自然エネルギーを増やす仕組み
・今日までに住宅を中心に72ヶ所、約1Mw。市民出資の総額は1億8500万円。全国どこからでも10万円から出資できるエネルギーアクション。
・12年間相乗りくんをやってわかったのは、「みんな自分にできることを探している」こと。一歩踏み出すと次の勇気になって、また一歩進める人が多い。できる!と思う情報を提供していくことが大事だと感じている。

<断熱ワークショップ>
・相乗りくんをやっていたが、長野県の現状を見てもっと何かやらないと!と思った
・「僕らの教室寒いんです」という高校生の声から、各地で断熱ワークショップを行なった。
・それで教室の断熱ワークショップをやることになった。2020年白馬高校をかわきりに去年は6校。今では県の予算がついている。
・教室の断熱をおこなったからといってCO2が減って大きな省エネ効果があるわけではないが、社会的的効果があると感じた。生徒や先生などたくさんの人が体験し、メディアや議員さんが見に来てくれる。人が集まる学校で行うことにも意味があると感じた。
・全国から問い合わせが多いので、マニュアルを作成中。データで無料ダウンロードできたり、冊子も用意する予定。
・生徒だけではなく、先生や校長先生も巻き込んで、県や教育委員会のサポートのもとでワークショップを開催したことで、ゼロカーボンへの加速へもつながっていくと感じた。
・「共創」プラットフォームができる。断熱ワークショップを支えるのは地域のコミュニティ

< 上田リバース会議>
・2019年上田市第二次総合計画で補助金が出ることに。
千葉商科大学 田中慎一郎さんに相談したところ、「上田のデータを集めて地域のステークホルダーたちと一緒に見てみてみよう」となり、会を開催することになった。
・まちのデータは行政が持っており、人口ビジョンやマスタープラン、活性化計画などのデータを俯瞰してみる会をおこなった。人口減少・まちのスポンジ化・お店の減少・市街地の地価の下落など。また、上田市民の最大の不安は車の運転ができなくなり、移動手段が確保できなくなることである(46.9%) 自家用車での通勤通学70%、学生の通学は57.6%で家族の車で送迎。バスはほとんど使われていない。上田市内の公共交通は衰退。いろんなことが見えてきた。地方都市はほとんどこういう状況。上田はまだマシな方だと思う
・垣根を越えた学びと対話の会「上田リバース会議」を開催した。地域の課題解決の波及効果が大きいテーマを選んで、さまざまな立場の人と一緒に話している。17回開催、のべ二千人くらい参加している。地域の課題解決の波及効果の大きいテーマを選ぶ。公共施設の老朽化、1回に100〜200人の参加。職員は毎回30〜40人参加してくれているのは強み。

⚪︎「上田リバース会議」から生まれた成果
・2時間半の会議で参加者の認識が大きく変わっている(アンケートで検証)→ゼロカーボンって我慢・不便になるのよね、というのが、豊か・平等地域が豊かになるのね!と変容していた。
・議会で「交通まちづくり」を市民と一緒に進める」との答弁があった。
・市長選の争点として「公共交通」を信毎が取り上げる
・2030年までのCO2削減目標が全国的にも高いレベルのものに
・環境省脱炭素先行地域事業(約30億円の国の補助。申請中)で「交通まちづくり」が事業の柱に
・都市計画マスタープランへの好影響。

■わかったこと
<公共交通を進めていくとゼロカーボンも地域課題も解決する>
・自家用車における一人当たりのCO2排出量は飛行機よりも多い。
・上田市のCO2の排出量は運輸部門が最も多い。
・公共交通の利便性を上げればこれらの地域課題が解決の方向へ。
・公共交通が普及して、ゼロカーボンが進んでいくと前に出したような地域の課題が1石10鳥くらい進んでいく。自家用車利用が減少でCO2排出減少し、免許返納してもお年寄りが外出しやすくなる、歩く長さが増えることで医療費が削減できるデータも増えている、高校生通学の親の送迎が不要になる、駅やバスの近くに住みたい人が増えることでお店が増えたり、地価も上がっていく。こういったことはすでに富山市でも実績が出ているというデータがあります。

<断熱はゼロカーボンも地域課題も解決する>
建物の断熱と地域課題の解決
・冷暖房のエネルギー削減でCO2排出量減少し、子どもにとっては、運動能力が高くなり、活動量が増えるなど成長に良い影響を与える、作業に適した環境になることで、学習効率・仕事効率の向上し、高齢者には、心筋梗塞、脳卒中(ヒートショック)などの予防などの健康増進効果が期待できる。

<太陽光発電はゼロカーボンも地域課題も解決する>
・太陽光発電は5Kwのパネルを設置すると、年間CO2約4トンを削減できる。
・太陽光発電を導入することで、自然エネルギー増加によるCO2排出減少、
大きな気候変動対策効果、安い電気で地域を守る、停電時の非常電源にもなる

<まとめ>
・気候変動対策をすると生活の質が落ちると思っているのは日本のみ。
・今はゼロカーボンが過渡期、前に進もうとする人を見て周りも動くようになる。市民がその活動の鍵を握っている。
・私たちが市民や民間事業者が明日からできる効果の高い、地域課題も同時に解決するゼロカーボンアクションは、交通と断熱と太陽光発電である。
・日本人だけが気候変動対策をすると生活の質がが脅かされると思っている。
・あまりにも大きな話題ですが動けば変わる。ゼロカーボンはまだ過渡期、前に進もうとする人を見て周りの人も動く、それが社会が変わる原動力であり、市民が鍵を握っていると考えます。


Q. ゼロカーボンをはじめ、人によって環境問題への向き合い方やスタンス、意識の違いがあると思いますが、コミュニケーションするときにどのように工夫していますか?

・コミュニケーションで気をつけているのは、できるだけ相手を見て話すことです。どこまで話していいかを考えながら話すようにしています。それから、できるだけファクトで話すことです。今の気候変動は今いる大人にしか止められない、私たちにしかできないと伝えられたらいいなと思っています。

上田市に集中しているように見えますが、使用しているデータは上田市に限らず、長野県や国のデータを使っていますし、実は上田リバース会議はオープンで、全国からオンラインで参加されます。

よく「環境のことは・・・」とおっしゃる方がいますが、私は環境活動しているつもりはないんです。環境を守る活動をしているのではなく、私たちの生活を守る活動をしているつもりです。


4.参加者からの質問・感想

・上田リバース会議がすごいなと思いました。「地域の痛い現実を一度ちゃんと見て、痛いからこそちゃんと見てやろう」とみんなが思えるというお話が印象的でした。気候変動などは大きな問題すぎて直視するのが怖くなります。一人でそういう資料を見るのは怖いけど、みんなで見て話すと対話が進む、という構造なのかな、とイメージができました。

・政府から言われているとゼロカーボンは人ごとに感じてしまうが、こうやって活動されている方の話を聞いて、資料もわかりやすくて、自分の生活にも直接影響があることを知ることができました。


5.まとめ

今回のテーマは県を超えて、国や世界、地球規模でとても重要になる話だったと思います。
問題が大きいからこそ、つい目を背けてしまったりイメージがつかずに楽観視してしまう人と、危機感を持って活動している人たちとの意識の乖離もどんどん深まってしまうといったことも起きてしまうこともあります。

「環境のために」ではなく、最終的に住みやすく、豊かな地域を作っていくために、みんなで地域を持続可能にしていくにはどうすれば良いのかという具体的な取り組みを伺える会でした。

公開講座からスタートする実践プログラムでは、このようなこれからの地域を見据えた時に大切になるテーマをどのように地域の中で実践していくか、そのためにどのような課題を乗り越えなければいけないのかということを、地域づくりのプレイヤーの皆さんと意見交換しながら考えていきたいと思います。

勉強会を踏まえての参加も可能ですので、ぜひご興味ある方は詳細をご確認ください!
https://nagano-machimura.net/kouza2023