2023年10月6日(金)20:00-21:00@zoomにて、これからの地域づくりテーマ勉強会を開催しました。
今回のテーマは「女性・若者に選ばれる地域づくり」です。
普段では表には出てこないような子育て世代のリアルな声や、なかなか聞くことのできない協力隊で活動する若者たちの想いなどを聞くことができた会となりました。
《開催概要》
開催日:2023年10月6日(金)20:00-21:00
参加者:11名
講師・アドバイザー:2名
・「木曽での子育てサークル活動の紹介」 井ノ上紀子さん 木曽子育てまちづくりの会
・「若者視点で捉える地域の可能性」 上野琉花さん 長和町地域おこし協力隊
事務局:長野県地域振興課、(株)エンパブリック
1. はじめに
会のはじめには、勉強会のファシリテーターを務める広石から今回の勉強会の開催趣旨を説明しました。
現在、地域が大きな変革期を迎えており、コミュニティーにも新しい視点、新しい考え方が必要ではないかと思っています。「まちむら”対話と共創”チャレンジ2023」の”Step2”では、長野県の総合計画にもある「しあわせ信州創造プラン3.0」より、5つのテーマで勉強会を行うことになりました。これからの地域づくりのヒントを得られればと思っています。今回は「女性・若者に選ばれる地域づくり」です。
2. 長野県の課題・現状について
続いて、長野県総合政策課の担当の櫻井氏より、「女性・若者に選ばれる地域づくり」に向けた、長野県の現状と課題について説明がありました。
■ 長野県の現状
・長野県の人口の推移を見ると、約22年間で20万人減少しています。人口減少に歯止めがかかっておらず、人口ピラミッドから見ても、働き盛りの若い世代がいなくなっています。特に若い女性の減少が大きいのが現状です。
・長野県の将来人口推計を見ると、50年後に40.8%減少の見込みで、特に、生産年齢人口や年少人口が大きく減少することは大きな問題と認識しています。
・子どもが増えるには、将来母親となる人たちがその地域にいないといけない。つまり、女性に住みたいと思ってもらえるかが大切です。女性に選ばれない地域には未来がないとも言われており、さらには、少子化対策は早く手を打たないと、ますます人口減少は加速していくことになります。
これらの問題意識から、女性・若者に選ばれる県づくりが重要テーマになっています。
■ 現場の課題
・一度きりの人生を自分らしく生きたい、それができるのが長野(とすると)
→女性若者の希望がかなう(結婚したい、子どもを持ちたい、就学・就労の希望がかなう)
→女性・若者に魅力的なまち・自然がある
→住む場所、学ぶ場所、働く場所が魅力的
こういった場所になることが、選ばれていくために必要なことではないかと考えています。
・データから考えていくと、少子化の現状や課題としては下記が挙げられます。
*若者の県外への流出、特に若い女性の転出超過が著しい状況
*共働きがどんどん増えてきていること
*女性が出産や子育て期に離職し、仕事を再開してもパートが多く、正規職では戻れないこと
*経済的負担の大きさから、子どもを持つことが経済的リスクとして捉えられていること
*男性の育児休暇取得率の低さなど、子育てと仕事の両立が困難なこと
*男性の育児休業取得率が低いのは「固定的性別役割分担意識」も根強く残っていること
・ライフルホームズ総研の分析では、県外転出者のUターン希望割合は全国3位。移住したい都道府県ランキング17年連続全国1位(田舎暮らしの本)と全国的にも長野は選ばれている方です。ではなぜ出ていって帰ってこないのか。理由としては、県内に希望する進学先がないことや、働きたいと思う企業が無いということが挙げられます。
ただ、戻ってきたいという意向はあるので、このギャップをどう解消するかがポイントと考えています。
3. 活動紹介
続いて、地域で活動の実践をおこなっている2組の方から、活動の紹介を活動する上で感じていることをご紹介いただきました。
「木曽での子育てサークル活動の紹介」
井ノ上紀子さん 木曽子育てまちづくりの会
■ 自己紹介:
埼玉出身。結婚を機に木曽町へ移住。木曽町役場へ就職。12歳から3歳までの4児の母。
■活動のきっかけ:
移住して4年目に長男が生まれ、育児休業になると人とのつながりがほとんどなくなり、わからないことばかりで、小さなモヤモヤがたくさん溜まっていきました。
そんな時、伊那市の「おさんぽ会」に参加したらとっても楽しくて、生き生きした子供の姿を見て、こういう体験を木曽でやってみたいと思いました。最初は保健師さんに気持ちを打ちあげたことから始まり、次に子育て支援担当者と会うことになり、役場の会場を借りて月一で座談会を開くようになりました。
その半年後、立ち上げたのが「木曽子育てまちづくりの会」です。2014年の発足当時は約5人でしたが、現在約40名になりました。主に乳幼児から小学生の子供を持つお母さんたちが中心で、木曽町の他にも郡内の町村の方の参加もあります。
■活動内容:
親子イベントの開催、SNSなどでの子育て情報の発信、行政などとの協働によるまちづくりを実施しています。例えば、父親や地域の人が先生となって自然遊びを行う「森のこども会」、不要になった育児グッズを集めて欲しい人が自由に持ち帰る「おさがりひろば」、まちのお母さんたちが好きなことや得意なことを生かしてワークショップを行う「子育てひろば」の開催や、行政との意見交換などがあります。
■ 活動で大切にしてきたこと:
「思いを持ち寄る場を作る」ということを大切にしてきました。お母さん達はそれぞれに「この町のここが好き」「この町でこんな子育てがしたい」「子ども達のためにこんなことをやってみたい」という思いを持っています。その想いに共感して、一緒に汗を流してくれる仲間が自然と集まったのだと思います。お母さんたちは多様な経験や能力を持っているので、みんなでやっていったら自然と形になっていきました。
■ 個人的に活動を通じて感じたこと:
出会えた人たちが自分にとっては財産です。地域の中で安心して思いを伝え合える仲間がいることが幸せです。まちづくりをしようと思ってやってきたわけではなく、目の前の子どもと向き合って、日々の生活を一生懸命やってきた、みんなで支え合ってやってきた結果がまちづくりになったと思います。
Q. 今回は長野県の問題意識の中で女性がより移住しやすい街、働きながら地域で暮らしていくというのがテーマとありました。長野県を選んで子育てをし、働く場所として木曽を選ぶにはどんなことがあったら良いでしょうか。
木曽子育てまちづくりの会のメンバーの方より:
私はまずその人が何を一番大切にしているか、何を一番やりたいかが長野県とマッチすれば、生きがいとしての子育てや働きというのが長野でできると思っています。
私の場合は店を継ぐために戻ってきましたが、その時に子どもが保育園に入れなかったという苦い経験があります。最近は少し変化してきていますが、本人の立場に置き換えて考えてもらいたいです。
「子育てまちづくりの会」のように役場に声を届けるという、窓口があると話しやすい。また、相談できる仲間がいることが大事なので、話しかけやすい人に話しかけられるような場、開かれた場がたくさんあるといいなと思います。
◯「若者視点で捉える地域の可能性」
上野琉花さん 長和町地域おこし協力隊
自己紹介:
1998年宮城県仙台生まれ。信州大学法学部(2017~)、長和町地域おこし協力隊(2021~)、NPO法人MEGURU(2022~)では人材支援、若者支援、キャリア支援もやっています。
■ 自分が納得できる人生を、自分で選択して生きられる社会:
これは私の人生のテーマ、自分のビジョンでもあります。自分らしい生き方をみんなしてほしいという個人的な想いであり、協力隊もそのための手段の一つです。
■ なぜ協力隊になったのか?:
大学3年生の時に文科省の奨学金制度でアフリカのケニヤに留学(インターンシップ)。自分の足で関係を作り、草の根的に仕事をするのが好きで、人と繋がりコミュニティの中で生活することに幸せを感じました。コロナ蔓延により帰国になってしまいましたが、「自分らしく生きる」「自分の人生を自分で選択して生きる」ことを後押しできる活動は、自分の身の回りからでもできるのではと思い、支援や場づくりをしたいと思って参加しました。
■ 何をやっているの?:
若者が自分らしくあること。悩みや意見などいろんな声を聞いたり、ローカルな場所で自分の納得できる生き方をする機運づくりをしていきたいと思っています。具体的には、空き家(清水屋)の活用、移動式映画館で上映会開催をしています。また、一般社団法人「ナワメ社」の立ち上げを考えており、ゆくゆくは人と地域を繋ぐ収益が生まれる形で展開していきたいと考えています。ここでは、定住に限らず、月に何回か来ると言ったような多様な関わり方にも取り組んでいきたいです。
■ 地域で活動しながら感じていること:
若者が地域に飛び込むと「地域活性化をしてほしい」、「地域のために頑張ってほしい」、「地域に定住してほしい」とよく言われますが、正直「知らんがな」と思うこともあります。人任せ、他責になっている場合、若者からすると「そんなの自分たちでやればいいじゃん」となります。「やって欲しいではなく、一緒にやる=共創」であり、だからこそ自分たちは「これをしたいです」と発信しつつ、地域の人がやりたいことも引き出して、一緒にできることを探します。このように”共創”を大事にして活動しています。
協力隊はボランティアではなく、制度としては3年の任期後に自立するための準備期間というものです。しかし、地域とか行政には、ボランティアだから地域の活動に参加してくれと言われてしまいます。任期中に継続的にきちんとお金が稼げる仕組みを作っていくことがゆくゆくは定住につながっていくと思います。
■今後の展望:
この和田宿で生業を作る、楽しく暮らすという機運をつくりたと思っています。地域活性化しなきゃという感じではなく、やりたいからやる、楽しいからやる、という機運です。そのためには、①自分で仕事を作ることができる、②暮らすことができる(住まいが提供できる)、③遊ぶことができる(娯楽)などの仕組みを作っていきたいです。
4.参加者からの質問・感想
・自分は地域おこし協力隊を始めたばかりで、ちょうど研修があったところです。(上野さんは)その若さで、活動をよく形にして言語化できたものだと感動しました。勉強になることばかりでした。
・地域おこし協力隊を自分もやっている。お二人の話を聞いて、自治体の課題をみんなで解決しようとしている感じだと思った。地域課題を解決したいのが自治体で、自分の何かを成し遂げたいのが協力隊という意味です。
パブリック側がどれだけ民側に寄り添えるかという話と、民側がやりたいことをやるんだけど、地域の何かの課題を解決しないとサービスにならないから、両者の対話がいるんだなと思いました。
民側は結構柔軟に対応されていて(井ノ上さん)、自治体が堅い部分があるのかなと感じました。だから真ん中寄りの協力隊みたいな存在が必要なのかもと思いました。
・一番いいなと思ったのが、地域のお母さんたちで集まって、それがまちづくりになっていることです。自分や自分の周りの人が楽しく暮らせるか、幸せに豊かになるために行動した結果が、地域づくりや活性化につながっていくのかもと思いました。勉強になりました。
・独身の人が来ると、行政や地域の人から、結婚しろとか子供産めとかそういうことばかりを言われる。そういう期待が前面に出ているので、逃げ出してしまう人もいるのでは。
・産めよ増やせよというのは若い人には響かない。発信の仕方には工夫が必要。気を付けたいですね。
5.まとめ
今回のテーマについては、勉強会に申し込まれた方のほとんどがこのテーマを選ばれるほど、長野県の皆さんにとって関心のあるテーマだったのではないかと思います。
女性や若者など、このように各地で生まれている良い事例を長野県に広げていったり、自分の地域でこのような活動が生まれてくるためには、当事者の皆さんの話を「聴く」ということが大切なんだと改めて考えるきっかけになりました。
公開講座からスタートする実践プログラムでは、このようなこれからの地域を見据えた時に大切になるテーマをどのように地域の中で実践していくか、そのためにどのような課題を乗り越えなければいけないのかということを、地域づくりのプレイヤーの皆さんと意見交換しながら考えていきたいと思います。
勉強会を踏まえての参加も可能ですので、ぜひご興味ある方は詳細をご確認ください!
https://nagano-machimura.net/kouza2023