2022年11月15日・17日・18日(木)20:00-21:30@zoomにて、今年度のまちむら寄り添いファシリテーター養成講座第5期 講師によるテーマ別企画応援講座3回を開催しました。
テーマ別企画応援講座では、本講座の講師3名が「自治・まちづくり」「暮らし・地域文化」「地域活動・住民主体」の3つのテーマで行う講座であり、受講生の皆さんが地域で話したい・取り組みたいテーマをより深め、整理するために行なっています。
《開催概要》
開催日:2022年11月15日(火)・17日(木)・18日(金) 20:00-21:30
参加者:本講座受講生・コミュニティ参加者
講師:船木成記(一般社団法人つながりのデザイン、元長野県参与)
新雄太(東京大学大学院工学系研究科特任助教 )
事務局:長野県地域振興課、(株)エンパブリック
テーマ1:自治・まちづくり
船木成記 (一般社団法人つながりのデザイン・元長野県参与) 先生
社会の幸福量の最大化を掲げて、一般社団法人つながりのデザインを立ち上げ、自らが代表理事を務めている。
長野県では、長野県参与としてしあわせ信州創造プラン(長野県総合5か年計画)に携わり、他地域でも尼崎市顧問、環境省SDGs民間活動支援事業委員などを通じて、地域の人の幸せの願いやその背景にある社会課題地域を受け止める地域ブランディングやまちづくりの領域で活躍している。
長野県では元参与として関わられ、ソーシャルマーケティングを専門に他の自治体でも活動していらっしゃる船木先生の講座では、船木先生が参加者の方に問いを投げかけ、実際に当日参加されていた方の悩みや最近の出来事への解決策などについて、船木さんと参加者の方で対話をそれぞれしていくという形で行われました。船木先生の考える対話とまちづくりの意味やそのポイント、地域と自治体との関わるためのプロセスについてお話しいただきました。
民生委員や生活支援コーディネーター、まちづくり支援員、地域おこし協力隊等、地域づくりに関わる方々それぞれの悩みや日々考えていることが出てくる会となりました。
地域の人との対話をする際のポイントとは
まずは地域の現状、暮らす人々の願いなどを地域の人から聞きながら、今の課題意識に目を向け、地域のグランドビジョンを自分なりに捉える。次に重要なのが、この自分で描いたビジョンにこだわり過ぎないこと。
同じ場所・環境で暮らしていた人でも全く違う考えを持っている人がいる、ということを認識し、相手と自分の感じたやビジョンとの違いを受け入れる。 そこから、その違いを踏まえて自分のビジョンをどう修正していくかを考えいく。
ファシリテートとは、主催者・参加者という役割を求めない場をつくること」
ファシリテーションやイベントを行う際に、話の落としどころやスキルなどの技術に私たちは目が行きがちになったり、場を操作しようとする概念になったりする。
そんなときに心得ておきたいのが、「今あるその場は二度と起こらない生(なま)もの」であること。違う場所や時に行ってうまくいった手法がその場でもうまくいくとは限らない。でもスキルはコピペできる。そのスキルを適用する場が毎回同じものではないということを認識しながら、この講座やその他経験してきたノウハウをぜひ蓄積していってほしい。
テーマ2:暮らし・地域文化
新雄太(東京大学大学院工学系研究科特任助教 )先生
スイスの設計事務所で勤務後、震災を機に信州に移住。
建築を民俗学などからみてみることに興味を持ち、研究を信州大学に勤務し行う。2017年から東京大学のまちづくり研究室教員を務めている。
信州大学で「地域を知る」ことに興味を持ち、大学でまちづくり研究室教員として長野県全体で研究を行っている新雄太先生が、実際に研究を進める中で行ってきたまちづくりのアクション方法やその研究を通して考えた「まちづくりとは何か」ということについて今までの事例をもとにお話しをしてくださいました。
まちづくりとは、地域を理解すること
長野県での6つのプロジェクトを通して、その地域の今まで目に見えていなかった情報を生産し、公の場に公開することで、対話の場づくりや戦略を考える「プレイス・ベースド・プラン」を実践している
例えば、
・土地の規制が重層的で土地利用や開発が難しかった小布施町でのプロジェクトでは、農地調査を行って見える化してから、将来の土地利用計画をゼミで考え、実際に低未利用地を使って作物の販売や遊び場として活用した。
・大手町の「空き家の学校」では空き家や空き地の量や場所を調べ見える化したことで、空き店舗を活用したマルシェなどを行う「シャッターオープンプロジェクト」につなげた。また、この調査を地域住民や学生といった研究者以外の人たちを引き込んで行ったことで、「みんなで自分たちの住む地域の状況を理解しよう!」という場が生まれた。
・長野市西後町にあるR-DEPOTでは「都市を科学する」というまちのデータを収集し、まちを視覚的にわかりやすく可視化する展示会を行っている。
さらに、このプロジェクトでは展示会の際にまちのデータをもとにした展示物を通して、高校生や経営者がまちについて話すという光景が生まれ、まちについてディスカッションする場という新しい空間ができた。
このように、現地調査という五感を使って、地域の人に聞き取りを行なったりして情報をみんなで集めていく、という地域を理解するプロセスそのものがまちづくりになっているのではないか。
参加者のコメント(アンケートより抜粋)
◯ 先生の活動の一部を報道で見させて頂いておりました。お話しを伺い納得できました。ありがとうございました。
◯ 移住者を増やすは解決なのか?コミュニティ必要曲線の話、ファシリテートした交流の場で学ぶデザイン力(リサーチ時の聞き取りやフィールドワークは非常にアグリーしました。質問にも答えて頂けたので、ありがたかったです。
色々と場を作ったあとの事を考えてしまうのですが、自分の野生のカンをきちんと信じてあげようと思いました。あと、やっぱり前提として人と人の「信頼」を丁寧にどう作るかだなと思いました。ありがとうございました。
◯ 人の暮らしを知る、ってとても面白いですよね。自分の毎日にはない習慣や感情に触れて、「こんな暮らしかたがあるんだなあ、良いなあ」と感じられるのは人間ならではですね。
民俗学に絡めてお話いただけるのは大変興味深かったですありがとうございました。
テーマ3:地域活動・住民主体
広石拓司(株式会社エンパブリック代表取締役)
先生
シンクタンク、NPO法人ETIC.を経て、2008年株式会社エンパブリックを創業。「思いのある誰もが動き出せ、新しい仕事を生み出せる社会」を目指し、ソーシャル・プロジェクト・プロデューサーとして、地域・企業・行政など多様な主体の協働による社会課題解決型事業の企画・立ち上げ・担い手育成・実行支援に多数携わる。
エンパブリックでは地域に対して普段思っている「こんな風になったりいいのに」という思いから場づくりをし仲間を増やすことで、地域活動や仕事といったつながりを社会に広げていく、という「場づくりと協働の技法を広げる」活動をされています。
今回は実際に対話をしていくうえで必要な考え方や視点、どのように問いを広げていくかについてお話していただきました。
「つながり」の始まりは「その人に関心を持つ」こと
地域での活動を行ったり、参加していく中で人同士での「つながり」をつくることはゴールとしても扱われることが多いが、「つながる」前に「その人は、どんなことに関心を持っているのか」というお互いが関心を持ちあえる関係になることがまずは重要になる。
その人が参加している背景や考え方などを知ることで相手と自分の違いを認識することができる。それにより、相手と自分が「違う」ことを前提として対話をすることができ、そもそもの考え方の基準や問いといった、共通する問題意識・テーマをお互いに理解しあうことができる。
ほかにも、相手に「関心を持つ」うえで、話を「聴く」ことが必要になる。みなさんは自分の話を聞いてくれない人と分かり合いたい、とはならないと思う。それは相手も同じ。「自分の話を聴いてくれて、自分を理解しようとしてくれるこの人なら…!」というその人との信頼も芽生えることにつながる。
参加者からのコメント
〇 求められているのは、コーディネーターとしての役割ですが、 情報を集める時はファシリテーターとして聞き書きを頑張ります😄
〇今までは一般企業に所属していたのでGive&Takeでしたが、give&giveで共に同じ目的のために進むという意識の持ち方が重要だと改めて気づかされました。
give & giveを実現するための心がけ ・異分子を受け入れるための対話を促すための声がけ を実践していこうと思いました。また、東京でのコミュニティづくり(昔から住んでいる人 vs 新しい人)の事例について興味を持ちました。 機会があれば詳しく知れたらと思います。
〇今年の目標は、対話の共感と話しの交通整理です。 苦手な「まとめ」について成長出来るように頑張ります 😅
〇丁度昨日地域の高齢者の方からお話しを伺う機会がありました。その方が大切にしていること、これからやりたいことをみっちりお聞きしました。次回は地区の皆さんが集まる時に呼んで頂けそうです。その時は、ファシリテーターとして対話が進むように頑張りたいと思います。ありがとうございました。