2025年3月1日(土)@長野市で、今年度のまちむら寄り添いファシリテーター養成講座で実施している4地域(上田市・木曽町・佐久穂町・駒ケ根市)でのフィールドスタディの最終報告会を行いました。
それぞれのチームごとに活動していた受講生が各フィールドで得た学びの共有を行い、『「まちむら寄り添いファシリテーター」としてどのようにこの学びを実践へ活かしていくか?』についてグループでの意見交換を行いました。


《開催概要》
日時:2025年3月1日(土)13:30~16:30
会場:RーDEPOT(長野市)・オンライン(zoom)
参加人数:受講生12名、一般参加15名
プログラム:
1. はじめに
2. 【第1部】チーム発表「フィールドスタディ地域から学ぶ「対話を活かした地域づくり」を実践するために大切なことは?」
3. 【第2部】個人発表「地域に寄り添うファシリテーターとして実践するために大切なことは?」
4. ふりかえり「今回の学びを『まちむら寄り添いファシリテーター』として、次の実践にどうつなげる?」
5. おわりに
上田市チーム
*フィールドワークのテーマ
「地域の未来を考える場づくり」を行っても、地域の現状の漠然としたイメージ、参加者の見えている現状から話しあう場になったり、思い付きのアイデアを言いっぱなしになったり、難しい課題は後回しにしてしまったりしてしまいがちです。
「地域の現状にしっかり向き合い、構造的な課題を理解した上で、多様な主体が自ら積極的に持続可能な地域づくりに参加していくプロセス」とは、どのようなことなのか?どうすれば実践できるのか?
ゼロカーボンをきっかけに、地域を見直し、これから必要な変化を共に考える仲間を広げていった「上田リバース会議」から学びます!

上田チームは、住民や行政との対話を通じて地域の課題とどのように向き合っていったら良いのか考えました。
特に、大学の田中教授へのインタビューを通じて、政策決定には時間がかかるからこそ多様な関係者との丁寧な対話が不可欠であることを改めて感じました。
このフィールドスタディを通じて、地域課題を客観的なデータと向き合いながら捉えることの重要性を感じました。データを活用し、現実の課題を直視することで、より具体的な議論を進めることができます。
さらに、リバース会議のように、行政と住民が主体的に合意形成を図るプロセスでは、対話の場を設け、違和感や疑問を自由に表現できる雰囲気づくりが不可欠であることも知り、改めて地域の場づくりの必要性やポイントを学びことができました。


受講生の発表については、下記からご覧いただけます
フィールドコーディネーター 藤川まゆみさんからのコメント
リバース会議は継続しながら偶然も活かしながらデザインしてきたせいか、ポイントが多く、コミュニケーションのニュアンスも経験してはじめて感じられることも多かったかと思います。
また、人によって感じ方も違うので、それぞれの意図や思いを汲み取るためにご苦労してくださり感謝します。
それなりに成果を生んできた上田リバース会議のエッセンス(あるいはノウハウ)を他の地域でも使えるんじゃないかと思っていたタイミングでしたので、とてもありがたく、学びがたくさんありました。
ラーニングファシリテーター 広石先生からのコメント
リバース会議には学生や高校生も結構来てて、気になったら覗いてみる、みたいな感じで関わってくれるんですよね。そういう人たちが自分たちで話せる場があるといいなと思うし、やっぱり「この人が言うなら聞こう」みたいな、顔の見える関係って大事だと思います。もちろん、個人に依存しすぎるのは良くない面もあるけど、やっぱり信頼関係が地域づくりの推進には欠かせないんですよね。
それと、行政と市民が一緒に学んで、認識を共有するってすごく大事で。例えば、このリバース会議の中で、当初は上田市のCO2削減目標って低めだったんです。でも、みんなで議論する中で「もっと高く設定できるんじゃないか?」って話になって、最終的に県と同じかそれ以上の目標に引き上げたそうです。
市民の皆さんが「それなら賛同するよ!」ってなったら、行政も「じゃあやろう!」ってなるし、それが結果的に脱炭素先行地域の制度を取ることにもつながった。今はエネルギー会社を自分たちで作るところまで来ていて、これもやっぱりリバース会議で共感が生まれたからできたことなんですよね。
あとは、国の動きとか、地域との関係とか、行政の政策と暮らしの結びつきって、データはあるけど意外とみんなちゃんと見てないんですよ。でも「これってどうなんだっけ?」ってモヤモヤしたことを話し合う中で、だんだん関わりができて、役割分担が生まれて、そこから協働が生まれる。それが地域づくりなんだと思うんですよね。
木曽チーム
「建物」は、役場、公民館、学校などの機能を担うために建てられますが、地域に住む人にとっては思い出の風景であり、誰かとの思い出が残る場所という意味もあります。
例えば、学校が廃校になった時に、住民の思いを無視して建物を壊す、全く別の用途に使うことは地域の文化を消すことにつながるかもしれません。逆に、新しい建物は地域にどう根付いていけるかによって、住民にとっての価値も変わっていくでしょう。
「建物は住民と共に生きている」という視点から建物と住民のつながりを見直すことによって、土地の文化を活かす地域づくり、建物を組み込んだコミュニティデザインを考えていきます。

木曽チームは、木曽町の地域づくりや歴史、移住者の視点を学ぶため、移住者でありおもちゃ美術館の館長を務める竹脇さん、役場関係者の方、黒川地区の前町長や地域の住民の皆さん、おもちゃ美術館の学芸員の方など、多様な立場の方々へのインタビューを行いました。
受講生からは、今起きていることだけではなく、地域の歴史や背景を一つひとつ遡ることが地域の想いを受け止めることにもつながるということに気づいたということも話されました。
また、地域の団結力についての話が印象的であり、住民が黒川小学校を廃校後も維持し、ふるさと交流館やおもちゃ美術館へと発展させた経緯から、地域の中で小学校を守りたいという想いから生まれた信頼関係と、それらを実際に形にしていくためのリーダーシップの重要性を感じたという発表がありました。


受講生の発表については、下記からご覧いただけます
フィールドコーディネーター 竹脇恵美さんからのコメント
私自身、知っているようで知らないお話を直接地域の方から色々聞くことができました。
やっぱりそれは、私と受講生の皆さんがいたからこそ聞けた話も多かったのかなと思います。
あと、木曽チームは、もう既に夏合宿をしようというような話もあるので、これをきっかけに他の地域の皆様も木曽に足を運んでいただける機会ができたらいいなっていう風に思っています。
ラーニングファシリテーター 新先生からのコメント
実際に建物をどう変えていったのか、かなりテクニカルな話も多くて、裏話なんかもざっくばらんに聞けたのが面白かったですね。元町長の話なんかもあって、行政側の視点がよく分かりました。
でも、途中から地元の方のお話になって、小学校に通われてた方や、ふるさと交流館になってから地域の伝統を伝える立場として関わってきた方の話を聞くと、また全然違う角度から建物との関係性が見えてきました。
おもちゃ美術館になってからの話では、学芸員の方との関わりなども出てきて、「ああ、建物ってただの箱じゃなくて、人の思いがちゃんとつながっていくんだな」ということを実感しました。リノベーションして用途が変わっても、その根っこにはずっと人の思いが流れているんですよね。
建物は、単に物理的に残っているだけじゃなくて、人と人との関係をつなぐ役割を果たしているんだなとも思いました。
だからこそ、むやみに壊してしまうのではなく、小学校という場が人々の心の支えになっていることをちゃんと踏まえて、どう残していくのかを話し合うことが大事ですよね。もちろん、意見のぶつかり合いもあったし、「戦い」なんて表現も出てきましたけど、それを経てもなお、しっかり受け継がれているっていうのがすごく良いなと感じました。
これまでの「成長時代のまちづくり」とは違う、新しい形のハードの継承の仕方だと思います。
佐久穂チーム
「地域に寄り添う」ことは、いざ実践しようとすると、何から始めたらいいのか難しく感じてしまうでしょう。
特に、外から地域に入る人は地域の勘所もわからず、足が止まりがちです。佐久穂町の「集落の話の聴き手」を増やす活動は地域の文化を残すためだけでなく、UIターン者が地域との関係を深める機会にもなっています。
地域のこれからをつくる活動と地域の経験はどう結びつけることができるのか。地域の人の声を「聴く」ことの地域づくりにおける可能性を実践方法も含めて学びます。

本フィールドスタディでは、地域の聞き書きを行う副島さんを中心に、彼と関わる人々の話を通じて、地域の実情や暮らしの在り方を探りました。参加者はそれぞれの関心に基づき、移住の経験、地域での仕事やつながりの築き方について、多様な視点から話を聞く形で進められました。
このフィールドスタディでは、地域に深く関わる人々のリアルな声が浮かび上がりました。
地元の高齢者との対話では、最初は警戒されながらも時間とともに打ち解けて、貴重な地域の記憶が語られたという体験であったり、
移住者の方が地域に込む過程では、理想と現実のギャップに悩みながらも、地元住民との関わりを深めることで新たな役割を見出していることなど、
一人ひとりの「人」がどのように地域の中で生きているのか?という部分がよく見えました。
単なる地域理解にとどまらず、参加者自身のキャリアや価値観を振り返る機会にもなったという部分が印象的でした。


受講生の発表については、下記からご覧いただけます
フィールドコーディネーター 副島優輔さんからのコメント
聞き書きって、単に「やった方がいい」というものじゃなくて、結局のところ、「聞く」という行為そのものが、その地域の人を思いやることに繋がるんじゃないか、っていう話がありました。
それぞれの場所、それぞれの相手に対して、共に暮らしていくための姿勢として、大事にしていきたいよね、ということです。
実際、何かの事業をやるときって、どうしても成果物に目が行きがちで、報告書を書かなきゃとか、計画を立てなきゃとか、そういう「形」にこだわることが多いんですよね。
でも、地域には、もっと大事なものがあるんじゃないかということを改めて実感しました。
ラーニングファシリテーター 船木先生からのコメント
実際に建物をどう変えていったのか、かなりテクニカルな話も多くて、裏話なんかもざっくばらんに聞けたのが面白かったですね。元町長の話なんかもあって、行政側の視点がよく分かりました。
でも、途中から地元の方のお話になって、小学校に通われてた方や、ふるさと交流館になってから地域の伝統を伝える立場として関わってきた方の話を聞くと、また全然違う角度から建物との関係性が見えてきました。
おもちゃ美術館になってからの話では、学芸員の方との関わりなども出てきて、「ああ、建物ってただの箱じゃなくて、人の思いがちゃんとつながっていくんだな」ということを実感しました。リノベーションして用途が変わっても、その根っこにはずっと人の思いが流れているんですよね。
建物は、単に物理的に残っているだけじゃなくて、人と人との関係をつなぐ役割を果たしているんだなとも思いました。
だからこそ、むやみに壊してしまうのではなく、小学校という場が人々の心の支えになっていることをちゃんと踏まえて、どう残していくのかを話し合うことが大事ですよね。もちろん、意見のぶつかり合いもあったし、「戦い」なんて表現も出てきましたけど、それを経てもなお、しっかり受け継がれているっていうのがすごく良いなと感じました。
これまでの「成長時代のまちづくり」とは違う、新しい形のハードの継承の仕方だと思います。
駒ヶ根チーム
子どもを支援する活動や多世代交流の場づくりに取り組む人が増えています。しかし、参加者や運営協力者を集めるのに苦労している活動も多くあります。
そのような活動をしていると、つい「子どものために」「高齢者のために」と力が入って、「しなきゃいけない」気持ちに自分自身が追われてしまいがちです。しかし大切なのは「支援するー支援される」ではなく、子どもも、高齢者も、関わる大人もそれぞれが場を楽しめていることではないでしょうか。
そのような一人ひとりが活き活きでき、良い関係ができる場をファシリテーションするとはどういうことなのか、現場を体験しながら考えていきます。

北澤さんの活動は、フードパントリーや子ども食堂、映画鑑賞会などの活動が行われ、メンバーが「やりたい」と思ったことを互いに支え合いながら実現していることが特徴的でした。
このフィールドスタディで特に印象的だったのは、目的を達成することよりも、そのプロセスを大切にする姿勢でした。
関わりたいときに関わることができる関係性が、場や活動への安心感をもたらし、それがさらに多様な関わり方を生み出していることも分かりました。
また、活動やコミュニティなどの形を維持することではなく、今の活動がなくなったとしても誰かに思いが受け継がれていくことが本質であるということに気づき、コミュニティのあり方を捉え直す機会になりました。


受講生の発表については、下記からご覧いただけます
フィールドコーディネーター 北澤孝代さんからのコメント
今回、いろんなイベントに参加してもらって、それぞれ知りたいことや聞きたいことを自由にインタビューしてもらう形で進めました。皆さん、最初から自分の課題が明確だったので、学びの場として「みんなの居場所・ゆいちゃんち」を体験してもらうことになりました。
イベントの中で、皆さん自然と活動の輪に入っていって、自分の力で関わりを広げていったのが印象的でした。
私が特にコーディネートすることもなく、「今日はこの人が来ますよ」くらいの紹介だけで、皆さんが自分からどんどんコミュニケーションを取ってくれました。それが皆さんの力の強さだと感じています。
最後の方で「残されたモヤモヤ」というテーマがついたのですが、最初は「まねきnekoを再現するにはどうするか?」みたいな話が出ていました。でも「本当にそれがやりたいのか?」って考えたときに、私自身もモヤモヤしてきて(笑)
大事なのは「何をやるか」じゃなくて「なぜやるのか」。そこをちゃんと問い続けることが、地域づくりのポイントになるんじゃないかと思います。
ラーニングファシリテーター 渡邉さや(株式会社エンパブリック)からのコメント
コミュニティを運営する側って、肩の力が入りすぎてるんじゃないか、っていうのが一つの気づきでした。
「どうにか続けなきゃ」とか、「若い人を入れなきゃ」とか考えがちだけど、別に無理に若い人を入れなくてもいいし、コミュニティや活動の形が変化するあるいは終わっていく形もあってもいいんじゃないか、と。
大切な思いって、誰かが引き継いでいくものだし、“いい力の抜き方”を覚えないと、やってる側も苦しいし、関わる人も苦しくなって、結果的に地域全体が苦しくなるんじゃないか。
自戒も込めてですが、今回のフィールドワークを通じてそんなことに気づかせてもらえたなと思います。
意見交換
地域に寄り添うファシリテーター(まちむら寄り添いファシリテーター)を実践する上で大切だと思ったこと、この要素を実践したいと思ったことは?
後半では、「地域に寄り添うファシリテーターとして実践するために大切なことは?」というテーマで、会場・オンラインそれぞれ一般の参加者の方も交えながら意見交換をしました。
また、最後には、オンラインコミュニケーションツール「Slido」を使って、グループで話したことの共有も行いました。


テーブルで話した中で出てきた意見(抜粋)
・やりたい事を口に出せるのも安心安全が関係性の中で担保されている事だからこそで、そこもゆるさが雰囲気の中で醸成されているからなのかなと思いました。
・ファシリテーターいうのは、相手の話をしっかり受け止めることなんですよね。
・人口減少で、今までできていたことができなくなるという経験が続き、未来を前向きに考えることが難しくなっていく中で、地域の方は、自己肯定感が低くなってしまっていると感じます。
・「地域活性化」などと言うと起業して活躍されている地域おこし協力隊など、目立つプレイヤーが注目されがちですが、地域にとって今本当に必要なのは、ファシリテーターのような、寄り添って肯定して、地域のもともともつ力を引き出す存在と、地域と一緒に伴走する存在なのではないかと思います。
・地域への「寄り添い」のありかたは非常に学びが多いと感じました。「私(たち)がこの地域を何とかしなきゃ」と思い込みがちですが、もっと想いの力を信じてゆるく考えてみるのも良いのかもしれないと思いました。
アンケートより
・地域に寄り添う存在の大きさを改めて感じました。一人のスーパーマンが地域を作るのではなく、あくまで地域づくりの主役は地域であるということに気づいてもらいたいと思う一方、手法が難しいと日々感じていますが、今回は本当にさまざまな手法を学ぶことが出来ました。
・「聞き書き」など共通するものはあるにせよ、地域とのつながり方は地域ごと全く違ったと思います。
猿真似ではないそれぞれにあったやり方を探すためには「話す」場と「聞く」場が必要だと感じました。
・知りたい、という思いと情熱と興味関心がなければ相手の本音を引き出せない。
また、聞き手側に「こうあらねば!」が強すぎると相手が安心して話せないし、そもそも良いコミュニケーションができない。ファシリテーターは人間力が肝要。奥が深いと改めて思いました。
・フィールドスタディ、馴染みのない場所に行って、心を開いていただいてじっくりお話をうかがう。
という行動には総合的な人間力が必要だと感じました。大変貴重な経験をすることができる講座ですね。